TL;DR

  • 厚労省の意思決定支援ガイドラインはGHにも適用され、終末期対応でも本人の意思確認が原則
  • GH単独での看取りは人員基準上困難なため、訪問診療・訪問看護との連携が前提
  • ACPの記録・多職種会議の実施が運営指導や加算要件で問われるケースが増加

意思決定支援ガイドラインとはどんな制度か?

厚生労働省は2018年に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を改訂し、2019年には「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」を策定しました。両ガイドラインに共通するのは以下の原則です。

原則内容
本人の意思の尊重本人が意思決定の主体であることを最優先する
継続的な意思確認状態変化に応じて繰り返し確認する(ACP)
多職種・多機関の合議医療・福祉の担当者が集まり検討する
記録の作成話し合いの経過を文書で残す

これらは特養・老健など高齢者施設を主眼に作られていますが、対象施設を限定する条文はなく、精神障害GHを含む障害福祉サービス全般に準用されると整理するのが一般的です。

GHの終末期対応は特養とどう違うのか?

特養は看護職員の配置が義務付けられている一方、GHは世話人・生活支援員が中心で、看護職員の配置は必須ではありません。この人員体制の差が、終末期対応の実務に大きな違いを生みます。

項目特養精神障害GH
看護職員配置原則必須任意(配置なしが多数)
医師の関与配置医師あり精神科医療連携加算等で外部委託
看取り実施率高い(看取り介護加算あり)低い(体制未整備が多い)
意思決定支援会議施設内で完結しやすい医療機関・相談支援専門員との連携が必須

GHでは医療的な緊急対応や身体管理が必要になった時点で、入居継続の可否を含めた検討が避けられません。ここで意思決定支援ガイドラインの手続きを踏まずに退去や医療機関への引き継ぎを進めると、後々のトラブルや行政指導のリスクになります。

終末期対応を法的にどう整理すればよいか?

実務では以下の3ステップで整理すると混乱が少なくなります。

  1. 本人の意思確認:可能な限り本人から直接、医療・生活に関する希望を聴取し記録する
  2. 多職種会議の実施:サービス管理責任者・精神保健福祉士・主治医・相談支援専門員が参加し、方針を合議する
  3. 代替判断の手続き:本人の意思確認が困難な場合、家族・後見人・関係者による話し合いで最善の利益を検討する

このプロセスを怠ると、意思決定支援ガイドラインが求める「本人意思の尊重」が担保されず、後見人や家族との認識齟齬が生じやすくなります。特に精神障害GHでは、認知機能の変動や病状によって意思表示が不安定になるケースがあるため、記録の頻度と具体性が重要です。

ACPの記録はどこまで整備すべきか?

運営指導や医療連携体制加算の確認時に、以下のような記録が求められる傾向にあります。

  • 意思確認の実施日・参加者・内容の記録
  • 本人の意思が変化した場合の再確認記録
  • 医師・訪問看護からの助言内容の記録
  • 家族・後見人との協議記録

中村康宏医師が代表を務める株式会社Anchorでは、精神科オンライン診療(月2回)を通じて、こうした意思決定支援プロセスに主治医が関与できる体制づくりを支援しています。オンライン診療の記録をACPの一部として活用することで、GH側の記録負担を軽減しながら法的整合性を確保する事例も増えています。

GHが今すぐ着手すべき準備は?

  • 意思決定支援ガイドラインの読み合わせ研修を年1回実施する
  • 入居時に本人の医療・終末期に関する意向を確認する書式を用意する
  • 訪問診療・訪問看護との連携先を確保しておく
  • 多職種会議の開催ルール(頻度・参加者)を運営規程に明記する
  • 記録様式を統一し、電子化・保存期間を明確にする

まとめ

意思決定支援ガイドラインはGHにも適用される前提で運用すべきであり、終末期対応では本人の意思確認・多職種会議・記録の3点セットが法的リスク回避の要になります。GH単独での看取りは体制上困難なケースが多いため、訪問診療や精神科医療連携を早期に構築し、ACPの記録を運営指導や加算要件にも耐えられる形で残すことが実務上のポイントです。