なぜ複数拠点展開で組織体制の見直しが必要なのか
共同生活援助(GH)は指定基準上、事業所ごとに管理者・サービス管理責任者・世話人などの人員配置基準を満たす必要があります。1拠点であれば施設長がすべての役割を兼ねる運営でも成り立ちますが、2拠点目・3拠点目と増えるにつれて、拠点ごとに基準を満たしながら、法人全体としての意思決定や情報共有の仕組みをどう作るかが課題になります。
拠点が増えたときにありがちな失敗は、既存拠点の管理者がそのまま新拠点も兼務し、どちらの現場にも十分に目が届かなくなるパターンです。よくある例として、管理者が複数拠点を掛け持ちした結果、記録の確認や職員面談が後回しになり、支援の質にばらつきが生じるケースが挙げられます(成果の数字は施設により異なるため記載しません)。
管理者は複数拠点を兼務できるのか
指定基準では、管理者は原則として専従とされていますが、管理業務に支障がない範囲であれば他の職務を兼ねることが認められています。この「支障がない範囲」の解釈は自治体の運用によって幅があるため、複数拠点で管理者を兼務させる場合は、指定申請や変更届の前に所轄の自治体に確認することが実務上の前提になります。
兼務を検討する際に整理しておきたい点は次のとおりです。
- 兼務先の拠点が同一敷地内か、近隣か、遠隔地か
- 兼務する管理者の勤務時間のうち、各拠点にどれだけ配分できるか
- 夜間・緊急時に管理者が不在の場合の代行者が明確になっているか
- 兼務によって職員の相談窓口が不明確にならないか
サービス管理責任者は拠点をまたいで兼務できるのか
サービス管理責任者(サビ管)についても、利用者の支援に支障がない範囲で複数事業所の兼務が認められる場合がありますが、利用者数に応じた配置基準を満たす必要があります。拠点ごとの利用者数や支援の状況によって兼務の可否は変わるため、複数拠点展開の初期段階から「どの拠点にサビ管を専従で置くか」「どこまで兼務で対応できるか」を人員計画に組み込んでおく必要があります。
サビ管の人材確保が難しい状況は多くのGHに共通する課題であり、複数拠点展開を進める法人ほど、サビ管の育成計画やキャリアパスをあらかじめ用意しておくことが重要になります。
複数拠点マネジメントに必要な組織階層とは
拠点数が2〜3を超えてくると、各拠点の管理者を束ねる中間管理職(エリア管理者・統括施設長など)を置く法人が多くなります。組織階層を整理する際の考え方は次のとおりです。
| 階層 | 主な役割 |
|---|---|
| 拠点管理者 | 日々の運営、職員シフト、入居者対応の一次窓口 |
| エリア管理者・統括 | 複数拠点の巡回、管理者の相談対応、加算要件の横断チェック |
| 本部(経営層) | 採用・研修方針、加算取得戦略、行政対応、財務管理 |
この階層を作ることで、拠点管理者は現場の支援に集中でき、加算要件の確認や行政対応など法人共通の業務は本部やエリア管理者が担う分業が可能になります。
法定研修・記録の標準化はどう進めるか
複数拠点になると、拠点ごとに研修の実施状況や記録様式がばらばらになりやすく、運営指導(旧実地指導)の際に拠点間で対応にムラがあることが指摘されるリスクが高まります。標準化のポイントは次のとおりです。
- 虐待防止・身体拘束適正化・感染症対策などの法定研修を法人共通のカリキュラムで実施する
- 個別支援計画、ヒヤリハット報告、服薬記録の様式を全拠点で統一する
- 加算の算定要件(人員配置、記録の保存期間など)を拠点横断でチェックできるリストを用意する
拠点間の情報共有と緊急時対応はどう仕組み化するか
夜間の入居者急変や職員の急な欠勤など、緊急時の対応は拠点ごとに属人化しやすい業務です。複数拠点展開では、以下のような仕組みを事前に用意しておくことが望まれます。
- 拠点をまたいで連絡が取れる緊急連絡網とオンコール体制
- 拠点管理者が不在時に代行できる職員をあらかじめ指定しておく
- 定例の拠点間ミーティングで支援状況や人員の過不足を共有する
複数拠点展開チェックリスト
- 各拠点で管理者・サビ管・世話人の配置基準を満たせているか
- 管理者・サビ管の兼務について自治体に確認済みか
- エリア管理者など中間管理職の役割と権限が明確になっているか
- 法定研修と記録様式が全拠点で統一されているか
- 緊急連絡網と管理者不在時の代行体制が整っているか
- 拠点間の情報共有ミーティングが定例化されているか
まとめ
GHの複数拠点展開では、拠点ごとに人員配置基準を満たすことが大前提になります。管理者やサービス管理責任者の兼務は「業務に支障がない範囲」でのみ認められるため、自治体への事前確認と、兼務に頼りすぎない人材育成計画が欠かせません。拠点数が増えるほど、エリア管理者による中間層の設置と、法定研修・記録様式の標準化、緊急時の連絡体制の整備が組織運営の土台になります。
出典
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000100171
- 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaiseijouhou/index.html
- 厚生労働省「運営指導ガイドライン(障害福祉サービス等)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.html
