ハラスメント防止研修は法律上義務なのか?

2020年6月に施行され2022年4月から中小企業にも適用範囲が拡大された「労働施策総合推進法」(通称パワハラ防止法)により、事業主にはハラスメント防止措置を講じる義務が課されています。GH運営法人もこの適用対象に含まれ、研修実施は義務そのものではないものの、防止措置の実効性を確保する手段として厚生労働省ガイドラインが強く推奨しています。

関連法令対象ハラスメント義務化時期
労働施策総合推進法パワーハラスメント2022年4月(中小企業含む全事業主)
男女雇用機会均等法セクシュアルハラスメント既に義務化済み
育児・介護休業法マタニティ・パタニティハラスメント既に義務化済み

特養を含む介護保険施設では、令和3年度介護報酬改定で「ハラスメント対策の措置を講じること」が運営基準に明記され、実質的に研修実施が標準化されています。GHにおいても同様の流れが今後強まると想定されるため、早期の体制整備が経営リスク低減につながります。

特養で実施されているハラスメント防止研修の内容とは?

特養では以下のような研修構成が一般的です。GHでも同様の枠組みを応用できます。

  • 職場内ハラスメントの定義と具体例(優越的な関係を背景とした言動、身体的・精神的攻撃など)
  • 利用者・家族からのカスタマーハラスメント対応(暴言・暴力への対応フローと記録方法)
  • 相談窓口の周知と利用方法(匿名相談、外部窓口の案内)
  • 管理者・サビ管向けのマネジメント研修(部下からの相談対応、二次被害防止)
  • 事例検討・ロールプレイ(実際のヒヤリハット事例を用いたグループワーク)

厚生労働省の調査では、過去3年間に職場でパワーハラスメントを受けたと回答した労働者は約31.4%にのぼり、介護・福祉分野は業種別でも相談件数が多い傾向にあります。夜勤や少人数体制が常態化するGHでは、閉鎖的な人間関係の中でハラスメントが潜在化しやすいため、定期的な研修と相談窓口の明示が特に重要です。

GHが研修を設計する際の法的注意点とは?

GHが研修を設計・実施する際には、以下の点に法的な注意が必要です。

  1. 対象者の範囲を明確にする — 管理者・世話人・生活支援員・非常勤職員まで全員を対象とすること
  2. 記録を残す — 実施日・参加者・内容を記録し、運営指導(旧実地指導)で提示できるようにする
  3. 相談窓口を明文化する — 就業規則または別規程で相談先・対応フローを明記する
  4. 利用者からのハラスメント対応方針も含める — 職員の安全配慮義務違反を防ぐため、対応手順を明確化する
  5. 二次被害防止の措置を盛り込む — 相談者への不利益取扱いの禁止を研修内で周知する

これらを怠った場合、労働基準監督署からの指導や、ハラスメント発生時に使用者責任・安全配慮義務違反として法人が損害賠償請求を受けるリスクが高まります。特に夜間オンコール体制など人員が薄い時間帯での対応不備は、訴訟リスクの観点から重点的に点検すべき項目です。

研修を実施しないとどうまずいのか?

研修そのものの未実施が直接の行政処分に直結するケースは限定的ですが、防止措置が不十分と判断されると以下のリスクが発生します。

  • 労働局への相談・指導のリスク
  • 職員の離職率上昇(ハラスメント放置は定着率に直結)
  • 損害賠償請求(安全配慮義務違反)
  • 運営指導での指摘事項として記録される可能性

株式会社Anchorでは、精神科オンライン診療や都加算の届出支援に加え、法定研修SaaSを通じてハラスメント防止研修を含む年間研修計画の管理・記録保存を支援しています。研修の実施漏れや記録不備は運営指導での指摘事項になりやすいため、SaaSでの一元管理が有効な対策となります。

まとめ

  • パワハラ防止法により事業主には防止措置義務があり、GHも対象に含まれる
  • 特養の研修内容(定義理解・カスタマーハラスメント対応・相談窓口周知)はGHにも応用可能
  • 対象範囲の明確化・記録保存・相談窓口の明文化が法的注意点の核心
  • 研修未実施は離職率上昇や損害賠償リスクにつながるため、記録管理の仕組み化が重要