夜間に困るのは「誰に伝えるか」が決まっていないこと
夜勤・宿直に入る世話人が最も困るのは、医療の判断そのものより前の段階です。発熱した、転びかけた、いつもと様子が違う——そのとき誰に、どの順番で、何を伝えるのかが決まっていないと、判断の責任が現場の一人に集まってしまいます。
体制づくりの目的は、職員に医療の判断をさせることではありません。観察したことを、判断できる人へ確実に届ける道を1本作ることです。
制度は「自前の看護師」を求めていない
共同生活援助の医療連携体制加算(Ⅶ)(39単位/日)の施設基準は、告示第551号 十六リに置かれています。内容は3つです。
- 事業所の職員として、または病院・診療所・訪問看護ステーション等との連携により、看護師を1名以上確保していること
- 看護師により24時間連絡できる体制を確保していること
- 重度化した場合の対応指針を定め、入居の際に利用者本人または家族へ説明し、同意を得ていること
注目すべきは1つ目です。制度は「看護師を雇うこと」を求めていません。外部機関との連携でも満たせるという前提で作られています。看護職員の採用が難しい事業所でも、連携先を決めて契約と手順を整えれば、体制として成立します。
作る順番は4つ
1. 連携先を決め、契約に書き込む
協力医療機関や訪問看護ステーションなど、夜間に連絡を受けられる先を決めます。口約束にせず、契約書・覚書に次の2点を明記してください。
- 看護師を1名以上確保していること
- 看護師により24時間連絡できる体制であること
2. 連絡の経路を1本に決める
「誰が→どこへ→何を伝えるか」を1枚の紙にして、電話機のそばと申し送りノートに置きます。分岐を増やすほど夜間は機能しません。一次連絡先は1つ、つながらなかったときの二次連絡先を1つ、が現実的です。
3. 伝える内容を型にする
夜間に慌てても抜けが出ないよう、伝える項目を固定します。
- いつから、どんな変化があったか(時刻を入れる)
- 測れたもの(体温・脈拍・血圧・血中酸素飽和度など、測れた範囲で)
- 普段との違い(食事・睡眠・会話・歩行)
- 服薬の状況(飲んだか、飲めていないか、頓用を使ったか)
- 今その場にいる職員数と、動かせる手段(受診に同行できるか)
職員が書くのは観察した事実です。「不穏」「悪化」といった評価の言葉ではなく、見たまま・聞いたままを伝えるほうが、受け手は判断しやすくなります。
4. 重度化時の対応指針を作り、同意を記録する
施設基準の3つ目は書類の整備だけでは終わりません。入居の際に説明し、同意を得た記録が残っているかが確認されます。既に入居している方の分も揃っているか、点検しておいてください。
看護職員配置加算との関係
看護職員配置加算(70単位/日)を算定している利用者については、医療連携体制加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)および(Ⅶ)を算定できません。 これは利用者単位の制限です。自前で看護職員を配置するか、連携で体制を確保するかを利用者ごとに選ぶことになります。
なお、(Ⅵ)100単位/日は看護職員配置加算と併算定できます。
収入の目安も計算しておきます(1単位10円と仮定。単位単価は地域区分で異なります)。
- 39単位/日 × 10人 × 30日 = 11,700単位/月 → 117,000円/月
この加算は体制への評価なので、連携先へ支払う委託費・協力費を引いた残りが手元に残る、という読み方が正確です。
東京都の事業所が先に確認すること
東京都には精神科医療連携体制加算(都加算)330円/日がありますが、看護職員配置加算または医療連携体制加算(Ⅶ)を東京都に届け出ている事業所は算定できません。どちらを取るかで収支が変わるため、体制を決める前に突き合わせてください。都の取扱いは年度で改定されるため、東京都の資料で最新版を確認してください。
まとめ
- 夜間体制の目的は、職員に判断させることではなく、観察を判断できる人へ届ける道を作ること
- 医療連携体制加算(Ⅶ)(39単位/日)は、外部機関との連携による看護師の確保でも満たせる
- 24時間連絡できる体制と、重度化時の対応指針の説明・同意の記録まで揃って要件を満たす
- 看護職員配置加算を算定する利用者は(Ⅶ)を算定できない((Ⅵ)は併算定可)
- 東京都では都加算との併給制限があるため、届出の前に比較する
出典
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成18年9月29日厚生労働省告示第551号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8504&dataType=0&pageNo=1
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省告示第523号/最終改正 令和8年3月31日・令和8年6月1日適用) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1
- 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定 単位数表(令和8年6月版) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf
- 東京都福祉局「東京都障害者グループホーム説明会 資料4 国報酬・都加算の概要について≪令和8年度版≫」 https://www.shougaifukushi.metro.tokyo.lg.jp/Lib/Download.php?sqid=3728
